0.はじめに
東京都心を歩けば、どこかしこで大規模開発を見かけることもあり、近年、再開発が注目を浴びています。注目される理由は単に目立つからだけではなく、再開発エリアのマンションは資産性が高まる、又は高いことが知られるようになってきているからです。実際、東日本大地震があった2011年に渋谷区の再開発を期待し、購入したマンションは倍近い値段で取引されています。
東京都都市整備局によると、東京都心での再開発(正式には『市街地再開発事業』)は、1971(昭和46)年の江戸川橋、1972(昭和47)年の飯田橋、西大久保に始まり、現在まで260地区が対象となってきました。2021(令和3)年9月30日現在、205地区が完了し、38地区が事業中、予定されているものが17地区もあります。
中でも、中央区は東京オリンピック・パラリピックの影響もあって特に多いエリアです。
例えば、晴海三丁目西や湊二丁目東、月島一丁目西仲通り、勝どき東、東京駅前八重洲一丁目東、八重洲二丁目北、晴海五丁目西、大手町二丁目常盤橋、豊海、日本橋一丁目中、月島三丁目北と11事業が進行中です。このほか、都市計画として決定しており、あとは事業計画の認可を待つものが5つもあります。
港区も再開発中のエリアが多い地区です。現在進行中の事業は三田小山町西や浜松町二丁目、新橋田村町、虎ノ門・麻布台、三田三・四丁目、泉岳寺駅、虎ノ門一・二丁目、西麻布三丁目北東の8事業です。また、白金一丁目西部中が2018(平成30)年に都市計画は決定しているものの、認可待ち状態です。
このように再開発エリアがたくさんある東京では、資産性の高いマンションが多いと言えますが、どれでも良いかと言えばそうではありません。
また、それなりに初期費用がかかるため、マンション選びは慎重に行わないと、後々物件を手放さざるを得なかったり(それでも負債が残ったり)、最悪住宅ローン破綻もあり得ます。
そこで、この記事では『再開発エリアのマンションの賢い購入に関わる補償や助成金、税金』について、基礎知識をまとめました。
1.再開発(市街地再開発事業、法定再開発)について
再開発にまつわるお金の話を理解するには、まず再開発の定義や、専門用語の意味を理解する必要があるので、最初にまとめました。
1-1.再開発(市街地再開発事業、法定再開発)とは
一般的に『再開発』と呼ばれるものは、正式には『市街地再開発事業』や『法定再開発』と言います。1969(昭和44)年に制定された『都市再開発法』に基づいて行われるものです。
『都市再開発法』は、1954(昭和29)年の『土地区画法』、1961(昭和36)『防災建築街区促進法』、『市街地改造法』という関連法律が含まれた内容になっています。
1-2.都市再開発法が生まれた背景
なぜ、わざわざ『都市再開発法』として関連法律を集約したかというと、東京のような地価の高い都市の再開発には多大な労力がかかったからです。
狭くて小さな土地に、色々な背景を持つ多くの権利者がいるため、結果的に土地の持分を減らすことになる『土地区画整理事業』をスムーズに進めることができませんでした。
そのため、再開発の過程でビルやマンションを高層化させることで床面積を増やし、元々の権利者の持分を減らすことなく再開発を進められるように、法律を整備したのです。
これにより再開発エリアの土地や建物、マンションの所有者は、再開発後も再開発前同等以上の権利を持てるようになりました。再開発を行なったエリアは、景観や治安の良さ、行政サービスや利便性の高さから一般的に資産価値が高まるため、権利者の持っている価値は上がることが多いのです。
>>買って10年、再開発で有名な豊洲のマンションの売却事例を基に、「住宅ローンが残っていても自宅を売却できるのか?」についてまとめました。
2.再開発エリアで補償が受けられる2つのパターン
2-1.第1種市街地再開発事業(権利変換方式)の場合
再開発エリアに高層ビルやマンションを建設し、再開発前に持っていた権利と同等の価値があるビルやマンションの床と土地を取得する方式です。再開発後の床で補償が受けられることから『権利床(けんりしょう)』と呼ばれます。
もし、再開発後のビルの権利がいらない場合、権利額と同等の金銭などに変えてもらうこともできます。なお、再開発後のビルを高層化することにより、余分に増えた床分のことを『保留床(ほりゅうしょう)』と言い、保留床の売却費用を事業費の一部に充てます。
2-2.第2種市街地再開発事業(用地買収方式)の場合
災害の危険性があり、緊急性が高いと認められたエリア等で行われる再開発のことで、地方公共団体が行います。
第1種市街地再開発事業との違いは、再開発エリアの土地や建物を、再開発事業者が買い取れることです。第1種のように権利の変換という手続きをとっていると、再開発事業に非常に時間がかかります。公共性、緊急性が高いのが第2種なので、再開発事業者に買い取る権利を与え、事業がスムーズに進むようにしているのです。
ただし、再開発エリア内に土地や建物の権利を持ち、希望している権利者には、買い取る代わりに再開発後の施設建築物の床を提供することもできます。
そのほかの床分については、再開発後に入居希望者に権利を再分配することになります。管理権限が強いため、この方法を『管理処分(かんりしょぶん)』と言います。
3.再開発に関わる主な3つの支援(交付金、融資制度、税制優遇)
再開発に関わる資金的な面では、主に3つの支援が用意されています。名前は違えど、受ける側からすれば実質的に補助金や節税に近い性質のものとなります。
3-1.社会資本整備総合交付金と防災・安全交付金
国土交通省によると、社会資本整備総合交付金は地方公共団体向けの補助金で、各自治体の状況に合わせて比較的自由に使えます。
例えば、都市公園や港湾施設の整備、アーケードモールを作るといったハード面への利用に加えて、レンタサイクルの社会実験をする、民間企業の進出や投資を刺激するような取り組みなど、ソフト面でも活用できるのが特徴です。
防災・安全交付金は、その名の通り、地域住民の命や安全を守るためのハード面の対策やソフト面の取り組みに交付されるお金です。
老朽化したインフラの補修、ハザードマップの作成・整備、河川堤防工事、防災訓練や教育、災害用資機材の整備、遊具や通学路の安全対策などに使われます。
これらの交付金は再開発に対して交付されるものの、いずれも地方公共団体向けであり、エリア内のマンション購入者個人に直接的な支払いはありません。ただし、エリア全体としての整備費用に充てられるため、間接的には恩恵を受けます。
3-2.まちづくり融資
住宅金融支援機構が行なっている、再開発エリアのマンション建て替え等で、権利床を増やしたり、保留床を取得するための事業資金について、有利な条件で融資を受けられる制度です。
ただし、融資制度を受けられるのは、自社使用や賃貸事業を目的とする事業者や組合であり、再開発事業の初期から参画している必要があります。また、資本金や出資金の総額が3億円以下、常時使用する従業員数が300人以下であることなど、いくつかの条件があります。
しかし、対象事業費の100%に対して融資を受けられる、100万円以上10万円単位で融資額を決められるなど、事業者にとっては非常に魅力的な内容だと思います。
金利については、短期事業資金は年0.58%、長期事業資金は年1.49%(全期間固定金利)と、事業用の融資としてはかなりの低水準です(2021年10月1日現在)。
3-3.税制優遇措置
再開発エリアのマンションを持つ個人にとって一番関係するのは、税制優遇措置だと思います。まず、ざっくり説明すると、不動産売買や権利の取得で本来ならかかる不動産取得税、固定資産税、登録免許税などがかからない、もしくは優遇措置が取られる、ということです。
例えば、再開発では権利床と言って、再開発前の価値と同等の床分の権利を再開発後に取得できます。この権利床の取得者は、資産の譲渡がなかったと見なされ、所得税(法人の場合は法人税)が課されません。また登録免許税も非課税となります。
不動産取得税は、課税標準の算定で再開発前の価額割合分が控除されます。さらに、固定資産税は床面積が50平米以上(借家の場合は40平米以上)280平米以下の場合、権利床のうち住居用は3分の2が新築から5年間減額されます(居住用の住宅でない場合や住宅でない場合は減額の比率が小さくなります)。
このほか、事業者の場合は法人税、法人住民税、事業税について課税の繰り延べが継続されるなど、個人、法人ともにかなり多くの優遇があるのです。
また、再開発に伴ってエリア外への転出を余儀なくされた場合は、代わりの資産取得にかかった所得税について5000万円の特別控除、地方公共団体が買い取った分については2000万円の特別控除が受けられるなどします。さらに、不動産取得税についても、再開発前の資産価額分が控除されるなど、メリットの多い優遇内容です。
4.再開発エリアのマンションの購入に関わる、補償、助成金、税金についてまとめ
『再開発』と呼ばれるものは正式には、『市街地再開発事業』や『法定再開発』と言います。様々な権利者がいる再開発をスムーズに進めるため、1969(昭和44)年に『都市再開発法』が制定されました。都心再開発法には、『土地区画法』、『防災建築街区促進法』、『市街地改造法』という関連法律が含まれます。
再開発に関わる補償や税金等について理解するには、覚えるべき下記の2つの用語があります。
4-1.権利床(けんりしょう)とは?
再開発エリアに高層ビルやマンションを建設し、再開発前に持っていた権利と同等のビルやマンションの床、土地を取得することを言います。
4-2.保留床(ほりゅうしょう)とは?
再開発後のビルやマンションを高層化することにより、余分に増えた床分のことを言います。保留床の売却費用を事業費の一部に充てることがほとんどです。再開発エリアで補償が受けられるのは、主に下記2つのパターンです。
・第1種市街地再開発事業(権利変換方式)
・第2種市街地再開発事業(用地買収方式)
再開発に関わる支援には主に3つあります。交付金、融資制度、税制優遇になりますが、受け取る側からすると、補助金や節税に近い性質です。
・社会資本整備総合交付金と防災・安全交付金
・まちづくり融資
・税制優遇措置
以上のように、都市再開発では、国を挙げて様々な推進策や補償、融資制度、税制優遇が用意されています。しかし、その多くは再開発を行う自治体、事業者、組合向けのものであり、個人が直接的に受けられるものは、あまりありません。わかりやすいものとしては、税制優遇くらいです。
ただし、自治体や事業者に支援がなされることで再開発がスムーズに進んだり、再開発後のエリアの価値が上がるなど、間接的に恩恵を受けることはできます。また、再開発事業によって優遇される内容は異なるので、一度自分に関係する再開発事業をまとめている自治体や事業者に確認してみてください。
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私が現地に行き、内容をまとめました。
国立大学在学時、2000年に学生起業に憧れ事業をスタート。2003年に社会人になり、今まで8社の事業に関わるも失敗。2006年より、大手証券や総合不動産会社を経て、2012年に再開発と住まい問題の解決をテーマとした不動産会社、(株)リビングインを設立し、賃貸・売買仲介や管理を行う。
プライベートでは、1997年以降8回の引っ越しと18回の自宅や投資用不動産の売買を経験。2020年までの8年間で300室以上のお引っ越しと180件を超す、住まいのトラブルに対応。
保有資格は不動産鑑定士補、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、2級ファイナンシャルプランニング技能士、住宅ローンアドバイザー、防犯設備士他。1978年生まれ、趣味は読書と素潜り。
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*2012年の創業以来、緊急時以外、不要な売り込み等で電話連絡する事はありません
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